カルシウム=牛乳なんてイメージがあるほど、親しみのあるミネラルですが、それ以外何に含まれて摂取しないとどんな弊害が出るか、理解してますか?
カルシウム不足だと怒りやすい、なんて言われますが、エビデンスは十分とは言えません。必要量をしっかり毎日満たせるように、どんな食事から摂取していくか考えていきましょう。
カルシウム(Ca)とは
人間の身体で一番多く含まれているミネラルです。身体の中に存在するカルシウムは、歯や骨には99%含まれており、不足することなく摂取できると骨粗鬆症の予防にも効果的です。また、成人では歯や骨のエナメル質に存在しています。
そのうち、1%はカルシウムのイオンとして神経や筋肉、血液中に存在しています。心筋の収縮や筋肉運動のサポート、血液凝固にも関与しています。
日本人のカルシウムの推奨量と充足率
カルシウムの推奨量
2020年度版の食事摂取基準では年齢や性別に合わせてカルシウムの推奨量が定められています。
18〜29歳 | 30〜49歳 | 50-74歳 | 75歳以上 | |
男性 | 800mg | 750mg | 750mg | 700mg |
女性 | 650mg | 650mg | 650mg | 600mg |
カルシウムの充足率
平成27年度版の国民健康・栄養調査の結果では、カルシウムの一般食品からの摂取量は517.3mgという数値が出ています。
これは、全ての年代別のカルシウム摂取量の平均が推奨量に届かず、不足している状況です。
その理由の1つには日本人ならではの和食の文化や土地環境が影響しているようです。
和食には、牛乳、バター、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品を使用する機会が少ないため、カルシウムが不足傾向になってしまいます。
また、日本の土地は火山灰土が多いため、土壌や飲料水などにカルシウム含有量が少ないことも考えられます。
したがって、日本人は海外の方よりもカルシウムの摂取量を意識する必要があります。
とくに学校給食が実施されている年代(7~14歳)では、カルシウム摂取量が多くなりますが、それ以降はカルシウムの摂取量が低下傾向にあります。そのため、個々にカルシウム補給を意識した食生活を送ることが求められています。
カルシウムの不足や過剰の影響
カルシウム不足の影響
カルシウムが不足すると、歯や骨が虚弱してしまいます。とくに幼児では骨の発育が悪くなってしまったり、成長が遅延したりしてしまいます。
カルシウム不足が慢性化すると、骨密度が低下し、骨粗鬆症が生じやすくなります。また、神経や筋肉の興奮によるテタニーやてんかんなどの症状が起こる場合があります。
カルシウムの過剰の影響
カルシウムの過剰症には高カルシウム血症、腎臓結石、血管や軟部組織の石灰化のリスクがあります。
許容上限摂取量は19歳以上の男女とも2500mgとなっています。カルシウムは日常の食事では許容上限摂取量を上回ることは少ないとされていますが、サプリメントなどを摂取されている場合には、カルシウムの摂り過ぎには注意が必要です。
カルシウムが不足するとき
カルシウムが不足すると、体内の骨が破壊され、カルシウムが血液中に溶出します。(骨吸収)
一方、体内に取り入れたカルシウムは、小腸から吸収されて余分なものは骨に貯蔵されます。(骨形成)
なぜなら、血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれているからです。
このように、骨は他の組織と同様に3ヶ月のサイクルで骨吸収や骨形成が繰り返し行われています。
成長期には骨形成が骨吸収を上回るため、骨量が増加します。
しかし、年齢を重ねるにつれて女性では閉経後に、男性では50歳あたりから骨吸収が骨形成を上回るため、どんどん骨量が減少してしまいます。
したがって、成長期以降から少しずつカルシウムを意識した食事をすることが大切になります。
カルシウムの多い食品(100g当たりで多いもの)
カルシウムは小魚や海藻、野菜、大豆製品など様々な食品に含まれているのが特徴です。
干しエビ | 7100mg |
煮干し | 2200mg |
ひじき(乾) | 1400mg |
えんどうまめ(塩豆) | 1300mg |
ごま | 1200mg |
プロセスチーズ | 630mg |
しらす干し(半乾燥) | 520mg |
いかなご | 500mg |
ししゃも | 350mg |
パセリ | 290mg |
モロヘイヤ | 260mg |
厚揚げ | 240mg |
牛乳 | 227mg |
大根の葉 | 220mg |
1食あたりでカルシウムが多いもの
牛乳や乳製品はカルシウムの吸収率が高く、1回あたりの摂取量も多いのでカルシウム補給には効率的な食品です。
とくあに牛乳のカルシウム吸収率が高い理由は、カルシウムイオンとして吸収されやすい状態で含まれていたり、牛乳成分の一種のカゼインホスホペプチドや乳塩基性たんぱく質が吸収力を高めると言われています。
低脂肪乳(1.5%)200cc | 273mg |
普通牛乳 200cc | 227mg |
モッツァレラチーズ 50g | 151mg |
プロセスチーズ 20g | 126mg |
ピザ用チーズ 20g | 126mg |
スライスチーズ 18g | 113mg |
例えば、1日に牛乳1杯飲むことでカルシウムの推奨量の約⅓近くを摂取することができます。
しかし、牛乳や乳製品などが必要以上に多くなってしまうと脂質やカロリーの取り過ぎも懸念されます。
そのため、牛乳や乳製品以外にも小魚や緑黄色野菜、海藻なども上手に組み合わせてとるようにしていきましょう。
カルシウムの効率的な食品
カルシウム吸収率
カルシウムは食品によって吸収率が異なります。
また、加齢に伴い、小腸でのカルシウム吸収率も低下します。
乳製品のカルシウム吸収率は50%、小魚は30%、緑黄色野菜は20%と言われています。
そのため、カルシウムの吸収率を高める栄養素と一緒に摂ることがおすすめです。例えば、リンやマグネシウムなどのミネラルがあります。
カルシウム:リン:マグネシウム=1:1:0.5の比率で摂取するとカルシウムの吸収率が高まります。
カルシウム摂取時の注意
カルシウムの吸収率を高める栄養素
ビタミンD、ビタミンK、マグネシウムと一緒に摂るとカルシウムの吸収力がアップします。
ビタミンD
腸管から吸収されたカルシウムを骨に届けてくれます。
ビタミンK
尿中のカルシウムの排出を抑えたり、骨のカルシウム取り込みを促す働きがあります。
マグネシウム
骨芽細胞に作用し、骨の中のカルシウム量を調整する役割があります。
カルシウムの吸収率を下げる栄養素
カフェイン、リン、アルコールが挙げられます。これらと一緒に摂る場合はカルシウムの吸収が抑えられてしまいますので注意しましょう。
カフェイン
コーヒーや紅茶などに含まれています。
カフェインは尿中のカルシウム排出を促してしまいますので気をつけましょう。
リン
インスタント食品やレトルト食品などには添加物のリン酸塩が含まれているものが多い傾向にあります。
リン酸塩はカルシウムの吸収を邪魔してしまいますので、加工食品のとりすぎには注意しましょう。
アルコール
利尿作用があるため、体内で必要なカルシウムまで排出してしまうので気をつけましょう。
カルシウムの多いメニュー
豚肉と生揚げの味噌煮
ごまや生揚げ(厚揚げ)にはカルシウムが多く含まれているので料理に使うことで手軽にカルシウム補給ができます。
作り方は、豚の塊肉と生揚げや人参、里芋、オクラなどの具材に味噌、練りごま、砂糖、醤油などの調味料を加えて煮込んだら完成です。
鶏肉のクリーム煮
牛乳や粉チーズなどのカルシウムやきのこのビタミンDが一緒にとれるメニューです。
鶏もも肉に人参、いんげん、生しいたけ、玉ねぎなどを炒め合わせて、牛乳やコンソメスープの素と一緒に煮込み、最後に粉チーズをふったら完成です。
仕上げの粉チーズを加えると本格的な洋食屋さんの味わいに変身です。パセリライスやサラダなどと合わせると栄養バランスも良くなります。
牡蠣と凍り豆腐の揚げ煮
凍り豆腐(高野豆腐)にはカルシウムが多く含まれ、保存がきくので、たんぱく質の食材が不足する時にも使いやすいメリットがあります。
作り方は、水戻しした凍り豆腐と牡蠣に片栗粉をまぶしてから油で揚げます。
そして出汁や砂糖、酒、醤油などの煮汁で一緒に少し煮たら出来上がりです。
切り干し大根とじゃこの煮物
切り干し大根やちりめんじゃこにはカルシウムが豊富に含まれていますので、煮物にすると常備菜にもなり手軽に摂れます。
作り方は、水戻しした切り干し大根とちりめんじゃこを油で炒めて出汁やみりん、醤油などで甘辛く煮たら完成です。
チーズケーキ
カッテージチーズとスキムミルクを使った低カロリーのデザートです。デザート感覚でカルシウムが補給できるので、お子さまにもおすすめです。
作り方は、水にふやかしたゼラチン液を鍋に入れてスキムミルク、砂糖を加えて煮溶かします。
次にカッテージチーズを手早く加えてから冷まし、いちごなどお好きなフルーツをトッピングしたら完成です。
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