誰もが一度は実施したことがある握力測定。代表的な体力測定の1つの「握力」にはいったいどんな意味があるかご存じですか?ここでは、握力を余すことなく、解説していき、皆様に正しい知識を知り、今後の活用に役立ててほしいと思います。
握力は身近な体力測定である一方で、正しく測定できているケースは意外と少ないかもしれません。その中で、自分の握力を見直し、健康や体力向上の指標にしていきしょう。
握力とはなにか!?
測定の意義・意味
握力は、全身の筋力や筋肉量の指標になります。そのため、他者との筋力の比較に加えて、健康維持のための体力の判定評価に使われています。
握力に関わる筋肉
握力計を握るとき、主に前腕部の筋肉を利用しています。
具体的には、「深指屈筋」「浅指屈筋」があります。さらに、親指を曲げる筋肉「長母指屈筋」なども関与すると考えられます。
測定方法
文部科学省の新体力テストの実施要項に基づいて実施するのが一般的です。
手順
- 人差し指の第2関節が直角になるよう、握力計の握り幅を調整します。
- 握力計の目盛りが外側になるように、右手で持ちます。
- 直立姿勢で力いっぱい握ります。握力計を振り回したり、身体に触れてはいけません。
- 続いて、左手でも同様に計測します。
- 右手→左手→右手→左手の順で実施し、右左交互に2回計測します。
- 小数点以下を切り捨てた左右各々のよい方の記録を平均し、少数第一位を四捨五入して得られた値が、握力となります。
姿勢・握り方
握力計は、人差し指の第2関節が直角になるよう、握り幅を調整して行いましょう。
直立の姿勢で、腕は自然に下げ、足は少し開いた状態で持ちます。握ったときに握力計を振り回したり、身体に触れてはいけません。
握力計
スメドレー式握力計を利用します。
竹井機器工業株式会社の握力計が現場ではよく活用されています。
結果の解釈
スポーツ庁は毎年、「体力・運動能力調査結果」を発表しており、そのデータをここでは活用していきます。
成人男性の平均値・標準偏差
20-24 歳 | 30-34 歳 | 40-44 歳 | 50-54 歳 | 60-64 歳 | 70-74 歳 | |
平均値(kg) | 45.8 | 46.9 | 46.7 | 45.6 | 43.1 | 38.0 |
標準偏差 | 7.3 | 7.4 | 6.7 | 6.4 | 6.1 | 5.5 |
サンプル数 | 1259 | 1326 | 1619 | 1165 | 1125 | 940 |
成人女性の平均値・標準偏差
20-24歳 | 30-34歳 | 40-44歳 | 50-54歳 | 60-64歳 | 70-74歳 | |
平均値(kg) | 27.8 | 28.2 | 28.9 | 27.7 | 26.5 | 24.0 |
標準偏差 | 4.9 | 4.9 | 4.6 | 4.5 | 4.1 | 3.9 |
サンプル数 | 1012 | 1082 | 1521 | 1215 | 1206 | 940 |
未成年の平均値
6歳 | 9歳 | 12歳 | 15歳 | 18歳 | |
男子(kg) | 9.1 | 14.5 | 23.9 | 37.0 | 40.9 |
女子(kg) | 8.6 | 13.9 | 22.0 | 25.5 | 26.2 |
有名人の握力
ボブ・サップ 選手 | 格闘技 | 98kg |
白鵬 選手 | 相撲 | 88kg |
錦織 圭 選手 | テニス | 75kg |
吉田 沙保里 選手 | レスリング | 55kg |
野口 啓代 選手 | クライミング | 42.7kg |
※インターネット等の情報で、正しく測定されたかどうかは分かりません。
フレイル・サルコペニアの判定基準のひとつ
握力は、フレイルやサルコペニアの判定基準の一つになっています。
男性が28kg未満、女性が18kg未満は、フレイルやサルコペニアの判定基準の一つが該当することとなります。
握力に関する知見
ハンドグリップは意味があるのか!?
握力は全身の筋力や筋肉量の指標として使われています。そのため、ハンドグリップで握力を強化すること握力の結果を改善につながりますが、ハンドグリップは全身の筋肉を鍛えることにはつながりません。
そのため、握力の低い方は、運動習慣をつけて、全身の筋肉を多く使って体力をつけるように意識することがいいでしょう。
寿命の指標になる
握力は、寿命や余命との関連性があることが報告されています。どの報告も握力が高い方が健康であるという
握力があるからずっと握っていられるわけではない。
握力は、あくまでもコンセントリック収縮における筋力を測定しています。その力を何分続けていられるかという筋持久力やエキセントリック収縮に耐えられるかを測定しているわけではありません。
柔道において握った襟を着られないように持つときの力とは、全く違うともいえます。握力計は、主に人差し指や中指を中心にぎりますが、柔道着は小指や薬指を中心に握るなど、握り方も異なるのです。
同様にラケット競技でも、握力があった方が強い球が打てるというのは間違いです。
【参考文献】
- 令和元年度 体力運動能力調査(スポーツ庁)
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