30秒椅子立ち上がりテストという体力テストがあります。椅子を用いた体力テストで、少し疲れますが、筋力や筋持久力を評価できる種目となっています。今回は30秒椅子立ち上がりテストの概要や測定方法などについて解説していきます。
30秒椅子立ち上がりテストとは?
30秒椅子立ち上がりテストとは、30 秒間に何回椅子から立ち上がることができるのかを評価する方法です。高齢者や下半身の手術後を行った患者たちの下肢筋力の推測に用いられることが多い方法ですが、体力や年齢に関係なく実施することが可能です。足の筋力や膝を伸ばす筋力がどのくらいあるのか実感できます。
【参考文献】人工膝関節全置換術患者における30 秒椅子立ち上がりテストの有用性
測定方法
30秒椅子立ち上がりテストの手順についてわかりやすくまとめました。
手順
- 座った状態で両手を胸の前に持ってきてクロスさせる
- 足は肩幅くらいに広げておく
- 足裏は床につけ、膝関節は90度から少し曲げた状態にしておく
- 開始の合図ともに両手をクロスした状態で立ち上がる
- 立ち上がった状態から再び座る
- 4と5の手順を30秒間経つまで繰り返す
備考
立ち上がって1回、座ってから再度立ち上がったら2回と数えて、実施回数を記入していきます。
30秒経つまでに何回立ち上がったのかを最終的に計測します。
また、実施の際は滑らない床の上で行うようにしましょう。
注意事項およびカウント対象外の行動・姿勢
30秒椅子立ち上がりテスト実施における注意事項やカウント対象外の行動・姿勢については以下のとおりです。
- 立ち上がる時に背筋が伸び切っていないまま座る行動
- 両ひざが完全に伸び切っていない状態で立ち上がり座ってしまう
- 万が一、転倒してしまった場合はケガ防止のためにテストの中断も考慮
【参考文献】
小林ら:後期高齢心疾患患者における30秒椅子立ち上がりテスト
結果の解釈
性別や年代ごとに調査結果をまとめました。
30秒椅子立ち上がりテストを実施したあとで、自身がどのあたりに位置するのか確認し、状況を把握してみてください。
男性
年齢 | 劣っている | やや劣っている | 普通 | やや優れている | 優れている |
20~29歳 | 22以下 | 23~27 | 28~32 | 33~37 | 38以上 |
30~39歳 | 20以下 | 21~25 | 26~30 | 31~36 | 37以上 |
40~49歳 | 19以下 | 20~24 | 25~29 | 30~35 | 36以上 |
50~59歳 | 17以下 | 18~21 | 22~27 | 28~31 | 32以上 |
60~64歳 | 13以下 | 14~19 | 20~25 | 26~31 | 32以上 |
65~69歳 | 13以下 | 14~17 | 18~21 | 22~25 | 26以上 |
70~74歳 | 11以下 | 12~15 | 16~20 | 21~24 | 25以上 |
75~79歳 | 10以下 | 11~14 | 15~17 | 18~21 | 22以上 |
80歳以上 | 9以下 | 10~13 | 14~16 | 17~19 | 20以上 |
女性
年齢 | 劣っている | やや劣っている | 普通 | やや優れている | 優れている |
20~29歳 | 17以下 | 18~22 | 23~28 | 29~34 | 35以上 |
30~39歳 | 17以下 | 18~23 | 24~28 | 29~33 | 34以上 |
40~49歳 | 16以下 | 17~22 | 23~27 | 28~33 | 34以上 |
50~59歳 | 15以下 | 16~19 | 20~24 | 25~29 | 30以上 |
60~64歳 | 13以下 | 14~18 | 19~23 | 24~28 | 29以上 |
65~69歳 | 11以下 | 12~16 | 17~21 | 22~26 | 27以上 |
70~74歳 | 9以下 | 10~14 | 15~19 | 20~23 | 24以上 |
75~79歳 | 8以下 | 9~12 | 13~17 | 18~21 | 22以上 |
80歳以上 | 8以下 | 9~12 | 13~16 | 17~19 | 20以上 |
【参考文献】
日本理学療法士協会:Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
30秒椅子立ち上がりテストに関する知見
30秒椅子立ち上がりテストを実施したことで何が見えてくるのか2つ紹介します。
リスク管理における有用性が認められる
まだまだ対象者が少なく、実施報告も少ないですが、下肢伸展筋力がどの程度なのか転倒防止というリスク管理の面では数値化することで可視化可能です。
高齢者の身体能力は個人差が大きく若干のブレがあるものの、30秒椅子立ち上がりテストの有用性が認められるものと考えられます。
劣っていると評価された場合は筋トレが有効
上記で紹介した表の数値より劣っていると評価された場合は、転倒防止のためにも筋トレを行いましょう。
下肢筋力を鍛えるためにはスクワットや足上げなどが有効です。
【参考文献】
中原 和美:最大下肢伸展筋力および生活機能と30秒椅子立ち上がりテストの関連性
全国健康保険協会石川支部:30秒椅子立ち上がりテストおよびページ2
まとめ
30秒椅子立ち上がりテストは下肢筋力の度合いを図るために有効な手段として利用されています。
トレーニングに使われていることもありますが、転倒防止のために自身の下肢筋力を可視化できるため、劣っていると評価された場合は下肢筋力が鍛えられるような筋トレを行うとよいでしょう。
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